進化する二世帯住宅|ストレスフリーな同居を叶えるポイントを紹介!
2022.01.06 10:20comment(0)
将来的な親の介護や住宅取得の負担軽減などを考えて、二世帯住宅を検討している方もいるのではないでしょうか。
とはいえ、いざ同居するとなると、お互いに気遣いが発生しストレスを感じてしまうのではないか、同じ空間での暮らしがイメージできないなどと、不安になっている方もいるでしょう。
そこで今回は、二世帯住宅の暮らし方の種類やメリット・デメリット、二世帯住宅を計画するときのポイントなどについてご紹介します。
自分たちに合うストレスフリーな同居スタイルを見つけて、理想的な二世帯住宅の計画に役立ててください。
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時代に合わせて進化した二世帯住宅の「今」
「同居」という暮らしの在り方が、現代の住宅では変わってきています。
ひと昔前の「同居」といえば、キッチンやお風呂、洗面所などを家族みんなが共有し、それぞれの寝室を個室として使う、アニメのサザエさんに登場する「磯野家」スタイルでした。
しかし、高度成長期以降には核家族化の暮らし方が大半を占めるようになり、個々の世帯が住宅を所有する時代が訪れました。
現在では、少子高齢化や親の介護問題なども増加したことで、あらためて「二世帯住宅」という暮らし方で、それぞれの世帯が距離感を保ちながら「同居」する住宅スタイルが注目されています。
「同居」しながらも親世帯と子世帯がそれぞれストレスなく暮らせる「二世帯住宅」は、互いの生活リズムを確保しつつ、家族とコミュニケーションがとれる「メリットの多い同居」スタイルが、人気のポイントではないかと考えます。
二世帯住宅は主に3スタイル|そのメリット&デメリット
二世帯住宅は、暮らし方のスタイルとして大きく3つに分けられます。
それぞれのスタイルの特徴とメリット・デメリット、建築費用の相場などをご紹介します。
完全同居型
完全同居型は、キッチンやお風呂、リビング・ダイニングなどを親世帯と子世帯が共有して使う暮らし方です。「共有型」ともいわれます。
主に寝室を個室として活用します。
- メリット
キッチンなど住宅設備を伴う部分を共有することにより、設備費用の負担が少なくなります。
間取りでは、リビング・ダイニングなどメインでくつろぐ部屋の面積を広く確保しやすいことも大きなメリットのひとつです。 - デメリット
共有する空間が多い分、コミュニケーションはとりやすいですが、プライベートな時間を過ごすのは少なくなることが考えられます。
食事や就寝時間など生活リズムが異なる場合は、お互いに気遣いながら暮らすことになります。 - 建築費用の相場
家族数や住宅仕様にもよりますが、おおよそ2,500万円~3,500万円が相場となります。
住宅設備は共有できますが個室の数が多くなるため住宅面積は核家族よりも大きくなる可能性があります。
部分共用型
部分共有型は、玄関、お風呂など一部の部屋を共有して使う暮らし方です。
完全同居型ほど共有部分は多くないが、完全分離型ほど別々の暮らし方ではないちょうど中間に位置します。
- メリット
共有部分は限定されているため、親世帯と子世帯のプライベートな時間を確保しやすい点がメリットです。
建物内ではつながっている部分がありますから、親世帯が孫の面倒をみやすいなど子世帯への生活サポートも期待できます。 - デメリット
共有部分と分離部分の区分けや使い方について、ある程度のルールを決めておかないと、イメージと違った暮らし方となりストレスが増える可能性があります。 - 建築費の相場
共有部分の場所にもよりますが、おおよそ2,500万円~4,000万円が相場となります。
共有部分が多くなれば設備費も建築面積も負担を軽くすることは可能ですが、お互いが納得できる区分けであることが大切です。
完全分離型
完全分離型は、玄関や水まわり設備、リビングから寝室まで共有部分を持たない暮らし方です。
ひとつの建物を左右や上下で区分けして、それぞれの世帯の住居とします。
- メリット
住居として独立していますから、プライバシーが確保できる点が大きなメリットです。
生活リズムが異なることによる気遣いも必要ありません。
独立しているとはいえ、同じ建物内ですから必要なときにはお互いに協力することも容易です。「スープの冷めない距離」ともいえるでしょう。 - デメリット
別々の住宅ともいえるスタイルであるため、建築費用は割高になります。
建物全体として面積も大きくなりがちですから、敷地にゆとりが必要など予算も含めて検討が必要となるでしょう。 - 建築費の相場
全体の住宅面積により費用も異なりますが、おおよそ3,500万円~5,000万円の範囲内が相場目安です。
住宅設備が2箇所分必要なこと、間取りによっては防音対策が必要なことなど費用はかかりやすくなります。
「二世帯住宅」と「はなれ」は違うの?
「二世帯住宅」と似ている暮らし方に「はなれ」があります。
ふたつを混同してイメージしている方も多いため、しっかりと区別できるように違いをご紹介します。
「ひとつ屋根の下で暮らす」が二世帯住宅
二世帯住宅の基本は、「ひとつ屋根の下で暮らす」ことです。
完全分離型であっても、建物はひとつであり分れていません。
しかし、「はなれ」は、同じ敷地内の離れた場所に独立して建つものを指します。
渡り廊下などでつながることはありますが、基本的にはメインの住宅とはつながっていません。
「隣家」のような関係性と似ているため「隣居」ともいえます。
ひとつの土地に2つの住宅はNG! 「一敷地一建物」の原則
建築の原則として「一敷地一建物」という考えがあります。
ひとつの敷地にはひとつの建物しか建てられないというものです。
二世帯住宅は「ひとつ屋根の下」であるため、世帯はふたつでも建物としては「ひとつの住宅」と扱われます。
一方、「はなれ」は独立した建物です。
建物の仕様によっては「独立した住宅」とみなされ建築は許可されません。
「独立した住宅」とみなされる要件は、キッチン、お風呂、トイレの3つの水まわり設備が計画されていることです。
3つのうちのどれかひとつでも計画に含まれない場合、「母屋に付属する離れ」として建築は可能と判断されます。
「はなれ」は、建築法規上「増築」扱い
居住空間として「はなれ」という暮らし方を検討する場合は、水まわりで不便が生じることを事前に理解する必要があります。
「増築」という扱いですから暮らし方のイメージも同じといえます。
どのような天候、時間帯でも母屋となる住宅の設備を利用しなければなりません。
このような暮らし方が現実的に可能か、お互いにしっかりイメージすることが大切です。
なお、「はなれ」の建築要件については、各自治体でルールを設けていることもありますので、地元の建築会社に問い合わせてみるとよいでしょう。
同じ敷地内で家を2つ建てる方法はある?
二世帯住宅を計画する場合、同じ敷地内にそれぞれ独立した住宅を建てたいと考えるケースもあるでしょう。
しかし、前述の通り、「一敷地一建物」の原則がありますから、ひとつの土地にふたつの住宅は建てられません。
ひとつの土地だから建てられないわけですから、「土地を分ける」なら一定の要件のもと、住宅を建てられます。
土地を分ける方法には「分割」と「分筆」と2種類あります。
- 分割
分割は、登記簿としてはひとつの土地ですが、任意のラインで土地を分ける方法です。
それぞれの土地の中に住宅が建つことになります。
ただし、分割で住宅を建てるには土地の接道の状況、敷地の建ぺい率や容積率など建築基準法に適合している必要があります。
また、登記上の土地としてはひとつの土地であるため、分割した片方の土地に住宅ローンで家を建てた場合、金融機関の抵当権設定は分割した土地分だけではなく、全体の土地に対して設定されることに注意が必要です。
- 分筆
分筆は、土地を分けてそれぞれの土地が登記簿でも別々に番号が与えられる方法です。
全く別の土地という認識ですから、接道条件など建築基準法に適合する建物なら問題なく建築できます。
ただし、分筆は測量したり所有権登記をしたり費用がかかります。
住宅ローンを利用する場合は、抵当権は分筆した土地のみに設定されますので、わかりやすい方法といえるでしょう。
「分割」と「分筆」、どちらがよいかは現状のさまざまな条件や将来的なリスクをどのように判断するかによっても異なります。
住宅ローンを利用する際は金融機関によってスムーズに運ぶかにも違いがある場合も考えられますので、建築会社などに事前に相談することをおすすめします。
同居の先輩から学ぶ! 同居での意外な後悔とは?
具体的に同居について検討しはじめると気になるのが、「同居の実情」ではないでしょうか。
住みはじめてから、「こうすれば良かった」と気づくことも多いものです。
ここでは、同居の経験を持つ方の事例をご紹介します。
思春期の子どもたちと親世帯の仲がギクシャク……
子どもが中学生、高校生など思春期を向かえるころに同居をはじめると、祖父母との暮らしに慣れず、ギクシャクしてしまうことも少なくありません。
同居前に祖父母と頻繁にコミュニケーションがあったなら、スムーズな同居に移行できるかもしれませんが、日常的に顔を会わせる機会が少なかった場合は、子どもがとまどってしまうかもしれません。
親世帯と同居を検討するときは、子どもの意見もしっかりと聞き最適な判断をすることが大切です。
ライフスタイルが確立してからの同居がストレスに
子世帯が50代以降になってからの同居は、親世帯も含めてそれぞれのライフスタイルが確立されているため、同居により生活リズムや趣味の楽しみ方などが制限されてストレスを抱えながら暮らすことにもなりかねません。
子世帯が若いうちに親の介護も見据えて同居する場合は、子育てのサポートや家事など折り合いをつけながら暮らしていけます。
一方、子育ても一段落した年齢になると、大人同士の同居生活となりますので、同居のイメージを事前にシミュレーションすることが大切です。
「遠慮のし合い」でお互いがストレスフルに
親世帯が高齢になり、身体が不自由となって同居を決断するケースもあります。
お互いにとって安心できる判断だったはずが、とにかく互いに遠慮しあってしまい、言葉に出せないことが多くなり精神的に辛い状況になってしまうことも少なくありません。
同居前から、ある程度「言いたいことは言える」関係性であるかどうか、同居前に具体的にイメージして決断することが大事でしょう。
二世帯住宅で親と同居するメリットとは?
いざ同居するとなると「上手くなっていけるかしら……」と不安に感じている方もいると思います。
しかし、二世帯住宅で同居することはメリットもたくさんあります。
家を空けるときも安心
家に在宅者がいるのは、二世帯住宅の大きなメリットのひとつです。
親世帯がリタイアしている年齢なら、子世帯が家族旅行などで不在になっても安心です。
宅急便などの荷物の受取を依頼することもできます。
子育てへのヘルプが見込める
子育て世代にとって、日常的にサポートを受けられるのは心強いことです。
特に子どもが小さいうちは保育園、幼稚園の送迎や、体調を崩したときの通院、子どもが帰宅後に在宅者がいるなど、共働きでなかなか時間が作れない子世帯なら、親世帯に頼ることができることはとても助かるでしょう。
経済的な負担を軽減できる
それぞれが住宅を所有する必要がないため、経済的な負担を軽減できます。
二世帯住宅の建築費用を分担することも可能ですし、日々の光熱費や食費なども共有できます。
税金が軽減される
土地や建物を所有すると毎年のように固定資産税がかかります。
二世帯住宅ならひとつ分の固定資産税で済みますので、維持のための税金負担は軽減します。
家事が分担できる
同居スタイルにもよりますが、家事を分担できる点もメリットです。
子世帯が共働きなら、食事をつくるのは親世帯が行い後片付けは子世帯が行うなど分担できます。
お互いの自由時間も増えてプライベートに使えます。
親の緊急時にすぐ対応できる
親世帯に何か異変があったときでもすぐに対応できます。
親世帯が高齢になると身体のことも心配になるものですが、離れていると状況がわかりにくく緊急対応もままなりません。
同居することで親の日常の様子を身近で確認できます。
にぎやかに暮らすことができる
家族が多くなりにぎやかに暮らせることもポイントです。
子どもがひとりだけの世帯も珍しくないため、コミュニケーションが少なくなりがちです。
さまざまな年代の家族が同居することで、日頃からの悩みなども相談できる環境があり安心です。
建物が別になる解放感! はなれのメリットとデメリット
「ひとつ屋根の下」の同居もよいけど、建物が独立している「はなれ」も検討したいという方もいるでしょう。
あらためて「はなれ」のメリット・デメリットを確認します。
- メリット
母屋と別の建物になることは、「はなれ」の大きなメリットといえます。
二世帯住宅は同じ建物内ですから、「はなれ」よりもお互いの距離感は近くなります。
一定の気遣いやルールづくりは必要です。
- デメリット
前述でもご紹介した通り、「はなれ」を建てるには水まわり設備を全て揃えることができません。
キッチン、お風呂、トイレのいずれかがない状態となるため、不便を感じることが想定されます。
「はなれ」は独立した建物としてのメリットはありますが、設備できなかった水まわりを利用するために、結局は母屋との行き来をしなければならないと考えられます。
現実な暮らし方としてしっかりとイメージすることが大切です。
ストレスのない二世帯住宅を叶える|同居前の5つのポイントとは?
二世帯住宅をストレスなく実現させるためには、次のようなポイントに注意して計画しましょう。
住宅購入資金の負担割合は明確に
住宅購入資金をそれぞれの世帯で分担する場合は、どのくらい負担できるか明確に計画します。
親世帯がどのくらい負担できるかあいまいにして計画し、最終的に資金が準備できなかった例もあります。
自己資金、住宅ローンなど資金計画について話し合いましょう。
どこをどう共有するかをとことん話し合う
完全分離型ならストレスなく暮らせて理想的ですが、予算の関係で実現できないこともあります。
この場合、どの部分を共有できるか、どの程度のプライバシーを確保したいか率直に意見を出し合い優先順位を決めておくと、間取り検討の際にも役立ちます。
光熱費や生活費の負担割合も同居前に決める
同居してから戸惑うのが「生活費の負担割合」です。
完全分離型なら光熱費のメーカーを分けることもできますが、ひとつのメーターの場合、負担割合をどのように分けるかルールを決める必要があります。
光熱費以外にも、食材や日用品の買い出しをどのように負担するか、生活をはじめる前にある程度のルールを決めておきましょう。
あいまいにしてしまうと、お互いが遠慮をしたり不満を持ったり、ギクシャクしてしまいますので気をつけましょう。
干渉されたくない部分ははっきり伝えておく
同居するとはいえ、なんでもオープンに話せるわけではありません。
それぞれの世帯や個人のプライバシーはある程度は守られることが必要です。
干渉されたくない部分があれば、同居がスタートする前に深く話し合うことをおすすめします。
遠慮して何も決めずにスタートしても、途中から変えたいことを伝えるのは「角がたつ」ことになりかねません。
何事もはじめが肝心です。
できる限り「生活音」が気にならない間取りに
同じ建物で暮らしていれば、個々の生活音を全て防ぐのは難しいでしょう。
しかし、できる限り「生活音」が気にならないような間取りの工夫は可能です。
親世帯と子世帯は起床や食事、就寝などの生活リズムが異なることが多いものです。
左右に分かれる完全分離型の二世帯住宅なら、生活音は最小になることが期待できますが、予算の都合で難しいこともあるでしょう。
上下関係の分かれ方になる場合は、親世帯の寝室の真上に子世帯のリビングなど音のでやすい部屋を配置しないように工夫します。
可能であれば、親世帯を平屋、子世帯は2階建が理想的です。
注意したいのが「吹き抜け」です。
天井が高く吹き抜けに憧れを持っている方も多いですが、吹き抜けを介して音が拡散され想像以上に気になるかもしれません。
共有部分をどのようにつなげるか、個室の上階にはどの部屋を配置するか「音」を意識しながら計画をすすめてください。
まとめ
今回は、二世帯住宅の種類やメリット・デメリット、建築費の相場や計画するときに注意点などについてお伝えしました。
同居のタイミングによって気をつけるべきポイントも変わっていきますが、大切なのはストレスなく暮らせるスタイルを全員できちんと話し合うことです。
あいまいな判断で進めていくと、のちに不満に感じたり関係性がギクシャクしたりする要因につながるおそれがあります。
お互いが譲れないこと、資金の負担割合などすべて重要なポイントですから、共同で計画を進めていき理想的な二世帯住宅を実現しましょう。
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