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空き家活用は計画的に! 成功する賃貸経営の基本

空き家活用は計画的に! 成功する賃貸経営の基本

2022.01.05 16:44comment(0)



空き家活用の方法のひとつである「賃貸経営」は、自然に資産価値を保ちながら収入まで得られる点で人気です。
実際に経営を始めてみようと思ったときは、失敗して諦めてしまう空き家オーナーが少なくないことを踏まえ、堅実に運用するための事前計画を意識しなくてはなりません。

ここで紹介するのは、空き家賃貸の失敗パターンから分析する「成功の基本」です。
読み進めることで「空き家特有のリスク」から「売却のポイント」まで、土地家屋の有効活用にかかる基礎知識も一通り押さえられるでしょう。

空き家はそのままにしておくとどうなる?

まず押さえたいのは、空き家をそのままにしておく危険性です。
家屋や土地は住人がいることで適切に維持管理されますが、人がいなくなれば老朽化はあっという間です。
誰もいない家は不審者に狙われやすく、予想外のトラブルに巻き込まれる可能性もあります。

実際に起こり得る以下のような事態を考えれば、できるだけ早いうちに「誰かに住んでもらう」ことが大切です。

【空き家のトラブル例】

  • 庭木の枝が伸びて敷地をはみ出し、隣人から苦情が来る
  • 不良少年のたまり場になったり、野外生活者が無断で住みついたりする
  • 家屋が朽ち、地震や台風をきっかけに倒壊して周辺住民にケガをさせる
  • 敷地内に不法投棄され、ゴミへの放火や自然発火が原因で大規模火災に発展する

空き家の維持管理が難しい場合の選択肢とは?

残念ながら、うまくやればどんな空き家でも賃貸経営に成功する……とは到底いえません。
見通しを立てた段階で、「借りてもらうのは難しい」と判断せざるを得なかった場合も当然あります。

そうなれば、管理維持費がかさまないうちに売却の目途を立てる必要があります。
計画として考えられるのは、「土地上に家屋を残したまま売るか」あるいは「家屋を解体して売るか」の2つです。

空き家を売却する

一番シンプルなのは、手を加えることなく「土地付きの中古住宅」として売りに出す方法です。
問題は、販売広告に一定の経費がかかるうえ、確実に売れるとはいえない点です。
粘り強く売れるまで待ったとしても、買い手がつくまで時間がかかったせいで、固定資産税等の余分な維持コストが発生するかもしれません。

空き家の売却にあたっては、事前にハウスクリーニング費用や測量費用を負担しなければなりません。
ハウスクリーニングだけなら高くても10万円程度ですが、測量費用は高額化することがあり、合計で60万円~90万円程度に達することがあります。

売買契約が成立したときには、細々とした費用(契約書類の発行手数料等)の他に、売却額に応じて仲介手数料や印税税もかかります。
さらに、売主の手元に残った代金は確定申告する必要があり、減額制度はあるものの一定の譲渡所得税がかかると考えなくてはなりません。

空き家を解体して土地を売る

空き家の多くは築年数20年以上に達しており、設備や構造も現代の需要には合いません。
そこで、いっそ売る前に解体しておき、自由に活用できる「更地」の状態で買主を募集する方法も考えられます。
解体する場合には、売却の諸経費に解体費用が加わります。
購入検討者の希望により、地盤調査や整地等も売主負担で実施しなければならない場合もあります。

また、空き家の売却を困難にする要素の1つに「土地の問題」があります。
敷地の形状が悪い・地盤がゆるい・接道条件が悪い・建築規制といった事情をかかえているなど、土地の条件によっては更地にしても売れないこともあります。

更地にすると解体費用がかかるうえに、古家付き物件よりも固定資産税が高くなるなど毎年の管理費も増えるので、土地売却が可能かどうかを事前に調べておく必要があります。
さらに空き家のなかには、解体すると新築できない「再建築不可物件」があることも見逃せません。
当てはまる場合は、買い手が住居として利用したい場合には家屋を残したまま売る必要があります。

戸建住宅の解体費用は、1坪あたり木造4万円、鉄骨造6万円、鉄筋コンクリート造7万円程度かかります。
隣接道路や建物自体の汚損によっては、構造等が同条件の住宅でも、50万円~100万円程高額になることもあります。
参考:NPO法人空家・空地管理センター

リフォームして賃貸に出す

そのままの状態では人に貸すことが難しい空き家でも、リフォームで綺麗になってからであれば、すぐ入居者が見つかるかもしれません。
具体的には、畳の部屋をフローリングにする、水回り設備を一新する等の工事が考えられます。

ここで賃貸前の空き家リフォームのメリットを挙げるなら、それは「相場より高い賃料を設定できる可能性がある」点です。
確かに初期投資はいくらか必要になりますが、高めの家賃でも入居があるようなら、後日回収することはそう難しくありません。

とはいえ、リフォームの効果に過度な期待を寄せたり、張り切って費用をかけすぎたりするのは厳禁です。
これから解説する「住宅診断の必要性」や「賃貸経営に成功するパターン」を押さえ、計画は緻密に練りましょう。

空き家の賃貸を考えるなら|リフォーム前に住宅診断を

空き家の大半は築年数が相当古く、老朽化により住みづらさが目につきます。
壁が薄い、害虫が発生する、耐震性能や省エネ性能に不安がある……となれば、借り手も買い手もつきません。

そこで活用したいのが、プロによる「住宅診断」です。
リフォームを予定している場合でも、診断で家の現状が分かれば、極力少ない費用で魅力的な家にする計画が立てやすくなります。

無料の住宅検査を受けてみる

住宅診断といっても、はじめから身構えて依頼先を探す必要はありません。
不動産会社・工務店・その他のリフォーム業者のなかには、無料検査サービスを実施しているところがあります。

無料でやってもらうとなれば、基本は目視のみの簡単な検査です。
そうはいっても、業者内部でも特に建材・工法等に詳しいスタッフに担当してもらえるのが一般的です。
現状注意したい箇所を知りたいだけなら、十分納得できる結果が得られるでしょう。

必要に応じてホームインスペクションを

目に見えて老朽化が進んでいるケースや、無料の住宅検査で指摘項目があったケースでは、有資格者による「ホームインスペクション」を受けましょう。
ファイバースコープや計測用器具を使った「二次診断」や「性能向上インスペクション」(表参照)を実施してもらうことで、家の状態をより正確に把握できます。

診断の種類概要目的
一次診断
(既存住宅現況調査)
目視中心の検査(非破壊)補修工事や点検の必要性把握
二次診断
(既存住宅診断)
一次診断で問題が見つかった部分を
中心とする検査
修繕の範囲&内容の特定
性能向上インスペクション構造上の安全性や住み心地を
中心とする検査
性能向上リフォーム(耐震・省エネ等)の必要性&内容の分析

インスペクション費用の目安は、概ね6万円から12万円程度です。
少し高いように思えますが、決して無駄な支出ではありません。
修繕すべき部位とその施工内容を特定できれば、結果的に無駄な初期投資をせずに済むでしょう。
家がごく健康な状態で保たれていると分かった場合でも、借り手・買い手の安心を担保でき、成約しやすさにつながります。

不動産のプロの目線でシミュレーションを

賃貸に出すのであれば、不動産のプロに相談し、維持管理するうえでのシミュレーションを行うのも大切です。
リフォームが必要な場合の費用なども算出したうえで、ライフプランを立てれば、無理のない賃貸運営が可能です。
借り手が見つかる賃貸料の相場や、管理費用の目安など、不動産のプロならではのアドバイスをもらえるでしょう。

また、民法改正で不動産の売主の責任が変わります。
空き家を売却しようとするときは、住宅診断の必要性がますます高いと考えましょう。
欠陥について説明しないまま売買契約を結ぶと、後になって契約不適合責任により、損害賠償義務等が生じるおそれがあるからです。

契約不適合責任は、以前「瑕疵担保責任」と呼ばれていました。
この変更では不動産取引の売主が負うべき責任の範囲が広がり、現在では「隠れた欠陥」にも責任が及びます。
土地建物を売買するときは、思い込みではなくしっかりと専門家に売却物件を調べてもらう必要性が高いといえます。

空き家の賃貸で成功する人と失敗する人の特徴

売却せずに空き家化を解消するなら、人に貸して住んでもらうのが一番です。
賃料収入も得られる点から、一石二鳥といえます。

ただ、経営は決して簡単ではありません。
空き家賃貸の失敗パターンを押さえ、成功するために何が必要なのかヒントを得ておきましょう。

空き家賃貸のよくある失敗パターンとは?

実際のところ、空き家賃貸で撤退に追い込まれるケースはそう珍しくありません。
賃貸経営の失敗の原因は、投資に関する知識不足や、経営開始前の準備や見通しに問題があります。

  1. リフォームなどの初期費用をかけすぎてしまう
    初期投資や経費がかさむと、赤字となり、ローンの返済や金利によって赤字が慢性化するおそれがあります。
    借り手のニーズや地域の実情に合わせた最低限のリフォームで手堅く賃貸運営を行うためには、経験豊富な不動産のプロのアドバイスが有効です。
  2. 借り手がなかなか見つからない
    借り手がなかなかつかず、収入ゼロの期間が長引くと、投資した経費の回収が難しくなります。
    効率よく借り手を探すためにも、地域の実情に詳しい不動産会社とつながっておきましょう。
  3. 入居者とのトラブル
    もっとも多いのが、家賃の支払いが滞り、回収のために手間と費用がかかるケースです。
    入居者の使い方が荒く、退去時の修繕費が高くつくなどのトラブルも起こりやすいので、入居者の見極めは慎重に行う必要があります。

空き家賃貸で成功する人の特徴とは?

空き家の運用に成功する人には以下のような共通点があり、いずれも不動産会社や住宅診断士といったプロの力を借りている点に要注目です。

  1. 入居率と家賃収入の見極めはプロに相談
    空き家賃貸は「投資」にあたります。
    自分では運用方針をしっかりしているつもりでも、収支で赤字になる場合があると考えましょう。
    運用を盤石にするなら、管理・仲介に慣れた不動産会社に相談するのが安心です。
    少なくとも「先々かかる経費」だけは計算しておかなくてはなりません。
    実際に安定した利益を得ている大家は、管理・仲介に慣れた不動産会社のサポートを得つつ、以下項目の試算額から利回りの予測を立てています。
    • 経費の内訳&金額
      修繕費(退去時含む)、管理会社に支払う委託料、清掃費用、損害保険料、固定資産税・都市計画税・所得税の賦課額、河川氾濫・台風・地震による被災の大きさと頻度、等
    • 賃料収入に影響する要素
      地域の家賃相場、設定したい賃料、間取り・立地・設備から見たニーズ、周辺の持ち家率、等
    • 入居がない間の施策
      自分で別荘として利用する、親族に住んでもらう、宿泊・一時出店・作品展示を希望する人に貸す、等
  2. リフォームは必要最低限に
    人気のある賃貸物件は「新しい」「きれい」「よい設備がある」の3条件が揃っています。
    そうかといって、過剰にリフォームするのは考えものです。
    確かに入居者はつきやすくなりますが、初期投資の回収に追われて肝心の利益はなかなか上がりません。
    空き家賃貸で成功する人は、今の家屋の状態を見極め、最低限必要な改修に留めるようにしています。
    家の魅力を高めることにこだわりすぎず、専門的な住宅診断を通じて「現実的なリフォーム計画」を立てるようにしましょう。
  3. 入居審査の審査は入念に
    一番大切にしたいのは、信頼できる入居者を選りすぐることです。
    特に「住む人の家との付き合い方」や「支払い能力」は、収益に直結すると言わざるを得ません。
    入居希望者の人格や資産状況を見極めるには、経験に基づく勘が必要です。
    そこで、空き家賃貸を手堅く経営できている人の大半は、多少委託料がかさんだとしても賃貸管理会社に入居者審査を任せています。

空き家賃貸の最新事情! 注目の「DIY型賃貸」とは?

空き家の悩みは決して自分だけのものではありません。
実のところ、統計上「誰も住まなくなった家」の数は年々増えており、国ぐるみで法整備等の対策に乗り出している現状があります。

最近特に注目されているのが「DIY型賃貸」(借主負担DIY型賃貸)の奨励です。
奨励にあたっては、平成25年から翌年にかけて住宅政策の検討会が開かれ、個別の契約で利用できるガイドライン等が整備されました。

DIY型賃貸とは、一般的な賃貸借契約とは異なり、必要な修繕やリフォームは借主負担で自由に行ってもらう賃貸借契約(もしくは物件そのもの)を指します。
国土交通省が公開する家主向けの手引書では、明渡し時の処理や原状回復義務の有無等について入居時に合意を交わしておき、施行前後の様子も貸主がチェックしておくよう推奨されています。
参考:「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」の最終報告について(国土交通省)

DIY型賃貸のメリット

空き家の所有者から見たDIY型賃貸のメリットは、高額化するおそれのあるリフォーム費用を限りなくゼロに近づけられる点です。
入居者の視点で見ても、一般的な賃貸借契約にある退去時の義務から解放され、世界にひとつだけの「自分の家」が作れる点で魅力的です。

【貸主のメリット】

  • 現状のまま賃貸できる
  • 長期入居が期待できる
  • 明渡し時にはグレードアップしていることもある

【借主のメリット】

  • 相場より安く借りられる
  • 多少の汚損は気にしなくていい
  • 持ち家感覚で愛着のある家づくりができる

DIY型賃貸の注意点

DIY型賃貸の契約事例は、これから増えていくところです。
それ故に契約方法やマナーの認知度が低く、国土交通省の手引きに従ったつもりでも、思わぬトラブルが発生するおそれがあります。
空き家活用の手段として検討するときは、不動産取引のプロによるコンサルティングが欠かせません。

【DIY型賃貸で起こるトラブル例】

  • 契約手続きが想定以上に複雑で、入居を待たせてしまった
  • 借主の配慮が足りず、近隣住民から「工事の音がうるさい」と苦情が来た
  • 明渡し時の内装が極端に個性的で、次の入居者が見つかりにくくなった

補足すると、入居者募集の段階でもひと工夫が必要です。
単に「内装や設備は自由に変更できる」と説明しても、ピンとくる物件検討者はまだいません。
熟練の不動産会社が仲介し、その人にどんなメリットがあり、どんなニーズを満たせるのか、きちんと入居者の相談に乗る必要があります。

まとめ

資産価値を維持しつつ利益まで上げられる「空き家賃貸」は、事前の計画が成功のカギです。
ここで改めて、賃貸経営に成功するコツを整理してみましょう。

  • 運用収支の見込みを立てておく
    経費(税金含む)・家賃設定・入居の見込み・入居がない間の施策を検討する
  • リフォーム計画は堅実に
    住宅診断(ホームインスペクション)を利用し、費用をかけすぎないよう必要最低限の修繕計画を立てる
  • 入居審査は管理会社に任せる
    大家としての判断能力を過信せず、トラブルを起こさない借主はプロに選りすぐってもらう

どうしても賃貸経営がうまくいく見込みが立たないようなら、売却も視野に入れましょう。
ただし、かかる経費には十分注意する必要があります。

空き家賃貸では「借主にずっと住みたいと思える部屋作り」がポイントです。
地域事情と管理経験に長けた不動産会社の支援が欠かせません。
その物件と予算に合う運用方針は、プロに提案してもらいましょう。

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